社宅担当者なら知っておきたい!現物給与価額の算定方法~所得税編~

社宅制度を運用するうえでは、「現物給与」の考え方を理解しておく必要があります。

現物給与とは、従業員が金銭以外で受け取る給与であり、社宅も現物給与です。
社宅の現物給与価額は所得税、社会保険料、労働保険料の算定に大きな影響があり、分かりづらいとの声をよく聞くポイントでもあります。

そこで、今回は、所得税における現物給与価額の算定方法や注意すべきポイントについてご説明します。

1.現物給与とは?

前述の通り、現物給与とは、従業員が金銭以外で受け取る給与のことをいいます。

国税庁のHP上では下記のように明記されており、社宅の場合、従業員から一定額の家賃(=賃貸料相当額)を社宅使用料として徴収していない場合、賃貸料相当額と社宅使用料の差額を課税しなければいけません。

給与は、金銭で支給されるのが普通ですが、食事の現物支給や商品の値引販売などのように次に掲げるような物又は権利その他の経済的利益をもって支給されることがあります。

(1) 物品その他の資産を無償又は低い価額により譲渡したことによる経済的利益
(2) 土地、家屋、金銭その他の資産を無償又は低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
(3) 福利厚生施設の利用など(2)以外の用役を無償又は低い対価により提供したことによる経済的利益
(4) 個人的債務を免除又は負担したことによる経済的利益

 これらの経済的利益を一般に現物給与といい、原則として給与所得の収入金額とされますが、現物給与には、

1 職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの
2 換金性に欠けるもの
3 その評価が困難なもの
4 受給者側に物品などの選択の余地がないものなど、金銭による給与と異なる性質があり、また、
5 政策上特別の配慮を要するものなどもあるため、特定の現物給与については、課税上金銭による給与とは異なった特別の取扱いが定められています。

 

出典:国税庁ホームページ 「No.2508 給与所得となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm

2.国税庁が定める現物給与価額の算定方法

従業員などに貸与している社宅が、現物給与に該当するか否かを確認するためには、まず、国税庁が定める賃貸料相当額を算出する必要があります。

使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)以上を受け取っていれば給与として課税されません。
賃貸料相当額とは、次の(1)~(3)の合計額をいいます。

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

使用人に無償で貸与する場合には、この賃貸料相当額が給与として課税されます。
使用人から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。
しかし、使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。

 

出典:国税庁ホームページ 「No.2567使用人に社宅や寮などを貸したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm

つまり、賃貸料相当額の50%以上を使用料として従業員から徴収していれば、所得税の課税対象にはならないということです。

例)賃貸料相当額が40,000円の社宅を従業員Aさんに貸与した場合

① Aさんに無償で貸与する場合
  ⇒ 賃貸料相当額40,000円が現物給与として課税されます

② Aさんから毎月徴収している社宅使用料が10,000円だった場合
  ⇒ 社宅使用料 ≦ 賃貸料相当額 となるため、賃貸料相当額と社宅使用料の差額30,000円が現物給与として課税されます

③ Aさんから毎月徴収している社宅使用料が25,000円だった場合
  ⇒ 社宅使用料 ≦ 賃貸料相当額 ですが、徴収している社宅使用料が賃貸料相当額の50%以上であるため、賃貸料相当額と社宅使用料の差額15,000円は現物給与として課税されません

3.現物給与価額を算定する際に注意すべきポイント

現物給与価額を算定する際は、他にも注意すべきポイントがあります。

3-1.役員社宅は賃貸料相当額の算出方法が異なる

役員に対して社宅を貸与する場合で、かつ貸与する社宅が小規模な住宅(※)でない場合、賃貸料相当額の算出方法は上記と異なります。

また、貸与する社宅が小規模な住宅であるか否かは床面積によって区分され、この区分や社宅の区分(自社所有社宅なのか、借り上げ社宅なのか)によって計算が異なります。

なお、本記事では触れていませんが、豪華社宅と呼ばれる社宅の場合は次の算式は適用されないため注意が必要です。

※小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。

出典:国税庁ホームページ 「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm

役員に貸与する社宅が小規模な住宅でない場合の賃貸料相当額の算出方法

①自社所有社宅の場合の賃貸料相当額 … 次の(1)(2)の合計額の12分の1

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
※法定耐用年数が30年を超える建物の場合は、(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×10%
(2) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

②借り上げ社宅の場合の賃貸料相当額

会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記1で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額

3-2.固定資産税評価額を把握する

賃貸料相当額を算出するには、固定資産税評価額を把握しなければなりません。

貸主・管理会社を通じて課税証明書を入手できればよいですが、提出してもらえない場合、各自治体から課税証明書を取得するための申請を行う必要があります。

自治体によって申請方法やフォーマット、手数料などが異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

また、固定資産税評価額は原則3年ごとに見直しが行われているので注意しておきましょう。

4.さいごに

これまでご紹介したとおり、賃貸料相当額を正確に算出しようとすると、所定の手続きや計算が必要となるため、少し面倒に感じるかもしれません。

しかし、賃貸料相当額を適正に徴収していないと、追徴のほか不納付加算税や遅延税などがかかります。
その場合、これまでの未納分を従業員から徴収する等、従業員への影響も大きいのでしっかりと理解しておくことが大切です。

 

 

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