予期せぬ修繕費用が発生?賃貸借契約における善管注意義務違反とは?

多くの賃貸借契約において、善管注意義務についての条項が設けられていることが一般的ですが、当然のことながら社宅の入居中にも留意しなければならない条項です。
本記事では賃貸借契約において、善管注意義務を怠ったことにより、予期せぬ修繕費用が発生する事例を紹介します。
費用負担を巡って、企業と社員との間のトラブルに発展することを防ぐためにも、以下リンクの内容とあわせて入居前の社員に周知し、トラブルの発生を防ぎましょう。

<参考>原状回復費用高額化の要因とその対策

1.賃貸借契約における善管注意義務とは

善管注意義務とは、「善良なる管理者としての注意義務」であり居室や設備を適切に使用しなかったことによる不具合の発生、発生した不具合を放置したことによる被害の拡大などを防ぐ義務が賃借人には課せられています

不具合の原因が経年劣化などによるもので、本来であれば賃貸人負担での修繕となるような場合でも、「まだ使えるから」「生活上支障はないから」などの理由で管理会社に報告せずに放置してしまい損耗が拡大した場合には、賃借人負担が生じてしまいます。

不具合は発見(発生)したらすぐに管理会社に報告し、然るべき対応をしてもらうようにしましょう。
損耗の理由が入居者の故意・過失による場合は賃借人負担となりますが、被害の拡大=原状回復費用の高額化を未然に防ぐという意味では重要な対策といえます。

2.善管注意義務違反による修繕費用負担の例

2-1.窓ガラスの熱割れ

冬季や寒冷地では、何も衝撃を与えていなくても熱膨張の影響でガラスがひび割れを起こすことがあり、このようなケースは賃貸人負担でガラス交換を行うこととなります。
しかし、連絡を怠って放置した結果、ガラスが大きく破損した場合は破損原因が熱膨張によるものとの判断ができなくなり、賃借人負担での交換となる可能性があります。

【対策例】
●ガラスに暖房器具の温風が直接あたらないようにする。カーテンが窓ガラスに直接触れないようにする。

2-2.24時間換気システムの不使用によるカビの発生

近年の建物は気密性・断熱性が高く、立地や周辺環境によっては室内の湿度が高まりやすい状況にあります。
2003年に建築基準法で24時間換気ができる設備の導入が義務付けられたため、現在の多くの物件には24時間換気システムが導入されています。
24時間換気システムを利用せず、室内にカビが発生した場合、クロスや建具などの交換費用が賃借人負担となることもあります。

【対策例】
●24時間換気システムを正しく利用し、空気の循環を保つ。それでもカビが発生してしまった場合は早急に管理会社へ連絡する。

2-3.排水機能低下を放置したことによる漏水

キッチン・洗面所・浴室などの排水管は、入居者の入れ替えごとに必ず高圧洗浄をかけているわけではないため、経年に伴って排水機能が低下していきます。
髪の毛や油汚れなどが排水管の奥の見えないところで固まり、詰まりを起こしてしまう可能性があります。
まだ流れるからと放置をして完全に詰まらせてしまい漏水事故が発生した場合には、階下への補償を含め多大な賠償責任が生じる場合があります。

【対策例】
●排水の流れが悪いと感じたらまずは市販のパイプ洗浄剤を利用する。それでも解消されない場合は早急に管理会社へ連絡する。

3.さいごに

本記事で紹介したのは、善管注意義務違反による費用発生の一例です。
物件の設備を正しく使用し、万が一不具合が発生した場合には早急に管理会社へ連絡することで、予期せぬ費用発生を防ぐことができます。
「まだ使えるから」「生活に支障はないから」「いずれ退去するから」と不具合を放置することは、より大きなトラブルへと発展する可能性が高まりますので、不具合発生時の対応方法についてしっかりと入居者へ周知しましょう。