原状回復費用高額化の要因とその対策

賃貸物件の退去時に発生する原状回復費用は、入居者の生活内容によって高額化する可能性があります。
原状回復費用が高額化すると、費用負担をめぐって企業と社員間のトラブルへと発展する可能性もあります。

では、そもそも原状回復費用を高額化させないような防止策はないのでしょうか。

今回は、原状回復費用高額化の要因とその対策をご紹介します。
入居前に社員に対して周知し、後々のトラブルの発生を抑制することで、コスト削減や社員満足度の向上へ繋げていきましょう。

1.入居者の過失に起因する原状回復

国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復義務の基本的な考え方として、建物や設備の経年による劣化や、通常の使用によって生じた損耗に関する修繕は、賃貸人負担で行うものとしています。
一方で、入居者の故意・過失などにより必要となった修繕は賃借人負担で行うものとなります。
本項では入居者の過失により生じる原状回復のうち、発生頻度が高く、原状回復費用が高額化しやすい事例を紹介します。

1-1. フローリングの損傷

傷や凹み、雨風の吹き込みなどを放置したことで、フローリングに深刻なダメージを与えてしまった場合、フローリングの張り替えが必要となります。フローリングはクッションフロアと異なり部分的な張り替えが不可能であるため、居室全体のフローリングの張り替え費用として、数十万円の請求となる場合もあります。
日常生活でついてしまったリペア可能な軽微な傷については、賃貸人負担となることが一般的です。

【対策例】
●カーペットを敷く、机や椅子の脚に傷防止クッションテープを貼る、雨水が吹き込んだ場合はこまめに拭き掃除をするなどを行い、より良い状態をキープする。

1-2. 結露・カビの発生

室内外の温度差が大きかったり、室内の換気が不十分であったりすると、結露やカビが発生することがあります。
結露やカビが発生し、それらを放置した場合、建具の交換が必要となることもあり原状回復費用が高額化する恐れがあります。

【対策例】
●こまめに換気や拭き取りを行う。
 ※換気や手入れを行っていても結露やカビが発生する場合は、管理会社に報告しましょう。
●24時間換気システムがある場合は電源を切らず、吸気口や排気口を開けて使用するようにする。
 ※クローゼット内など空気が循環しにくい場所には、除湿剤を置くことも効果的です。

1-3. 洗面化粧台の破損

洗面化粧台のボウルは、素材が樹脂や陶器のため、ビンなどの重いものを落としてしまった場合など、簡単に破損してしまいます。
また補修ではなく、洗面台交換となってしまうことが多く、費用が高額化する傾向が見受けられます。

【対策例】
●洗面化粧台の棚には、落下した際に洗面ボウルを破損させる恐れがあるもの(化粧ビンなど重くて硬い素材のもの)を置かないようにする。

2.入居者の生活様式に起因する原状回復

入居者に過失がなかったとしても、生活習慣・生活様式によっては原状回復費用が高額化することがあります。
以下の例は、原状回復費用が高額化する代表的な事例といっても過言ではありません。
事前に原状回復費用が高額化する旨を社員に周知して、理解しておいてもらうようにしましょう。

2-1. 喫煙による汚損

たばこの煙は居室全体に行き渡るため、ヤニ汚れや臭いによる汚損範囲が広く、天井・壁クロス等の全面張り替えが必要となることが多く発生します。
近年は技術の向上により、クロス洗浄で原状回復できるケースもありますが、クロスの下地まで臭いが染み付いてしまった場合、消臭代や建具の交換代まで請求されることがあります。

クロス自体は減価償却されるため、本来であれば居住年数に応じて張り替え費用の負担割合は減少していくこととなりますが、特約で喫煙に起因する修繕費用は全額賃借人負担と定めているケースも多く、原状回復費用が高額化する傾向にあります。

【対策例】
●喫煙する場合は、窓を開ける・換気扇の下で喫煙するなど、換気を心がける。
※ただし、これら対策を行った場合でも汚れや臭いが付着し、張り替え費用が請求される場合もあります。

また、集合住宅におけるベランダは専有部ではなく共用部とされていることが一般的です。
共用部での喫煙行為は
禁止事項に該当し、近隣トラブルや契約トラブルに発展する可能性があるため控えましょう。

2-2.ペット飼育による汚損・破損

ひっかき傷や汚損、臭いにより請求額が高額化するケースが多く、飼育条件としてあらかじめ多めに敷金を預託しておくことが求められる場合もあります。
前述の喫煙と同様にペット飼育による修繕費用は全額賃借人負担とされているケースが多くあります。
また、ペット飼育禁止物件での無断飼育や一時預かりは契約違反を問われ、立ち退きや損害賠償を求められる場合があります。

【対策例】
●ペット飼育による汚損や臭気は、通常の清掃で原状回復請求を抑制することは難しいため、飼育する際はその費用負担をあらかじめ入居者に理解してもらうよう働きかけを行う。
※ペット飼育可能な物件であっても、飼育可能な動物の種類や数、サイズに制限があることが一般的ですので、事前に重要事項説明書を読み、管理会社へ確認しましょう。

3.さいごに

正しい使い方をして、損耗箇所を放置せず手入れをして住めば、基本的に原状回復費用の賃借人負担は発生しないというのが、国交省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方です。
上述の事例と対策をあらかじめ入居者に周知し、原状回復費用を抑制しましょう。

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