賃貸借契約には違約金が設定されていることがあります。
違約金には様々な種類がありますが、特に設定されていることが多いのが短期解約違約金です。
この短期解約違約金について、よく知らないまま契約してしまうと退去時のトラブルにつながってしまうこともあります。
そこで今回は、短期解約違約金が設定されている物件を契約する際の注意点などについてご説明します。
1.短期解約違約金とは
短期解約違約金とは、貸主が定めた期間内に借主が解約する場合に、貸主へ支払う違約金のことをいいます。
ここでいう「貸主が定めた期間」とは、賃貸借契約上の期間ではなく、1年未満等の短期間での解約を避けたい貸主が「短期」として定義する期間です。
そのため、賃貸借契約期間内で解約する場合に必ず発生する費用ではありません。
2.短期解約違約金の相場
短期解約違約金は「賃料の1~2か月分」が相場です。
また、設定期間は「半年~2年未満」が多く、物件によって異なります。
契約書上では、「1年未満の解約の場合は賃料1か月分」や「半年未満の解約の場合は賃料の2か月分」、「2年未満の解約の場合は賃料1か月分」といった条件で設定されることが多くあります。
3.契約金が安価な物件は要確認
敷金や礼金が0円または相場よりも安価に設定されている物件は、短期解約違約金の設定があることが多く、設定されている違約金も通常の賃貸借物件の設定よりも高い傾向にあります。
元々、短期解約違約金とは、短期間で借主が退去してしまうと、クリーニング費用や入居者の募集費用等の貸主負担が大きくなるため、その負担を補填するために設定されている費用です。
また、敷金や礼金が0円などの契約金が安価な物件は、初期費用を低くする代わりに家賃が高く設定されていることが多くあります。
こういった物件は、初期費用分の収益を月次家賃で回収する仕組みであるため、短期解約をされると貸主は初期費用分の収益を回収できなくなります。よって、短期解約違約金も高めに設定されていることが多いです。
契約金が安価な物件を契約する際は、短期解約金の設定にも注意が必要です。
4.解約予告のタイミングには要注意
多くの賃貸借契約では、解約する前に解約予告を行わなければならないと定められており、一般的な解約予告期間は、借主からは1ヶ月前、貸主からは6ヶ月前です。
短期解約違約金の設定がある場合は、解約予告期間内に申し入れを行ったとしても、解約日が違約金発生期間内であったときは定められた金額を支払わなければなりません。
【例】短期解約違約金の発生期間が契約開始日から1年未満の場合
・2021年1月1日に契約開始
・2021年11月29日に解約申し入れ(=2021年12月29日が解約日)
⇒ 契約開始日1年未満に該当するため違約金発生
解約の際は解約予告期間、短期違約金が発生する期間、それぞれに注意し申し入れを行うようにしましょう。
5.違約金の負担者を明確にすることが重要
違約金が発生した場合、貸主に対して違約金を支払うのは借主(=会社)となりますが、その費用を会社と社員どちらが負担するのかを明確にしておくことが重要です。
特に社員に違約金を負担させる場合は、どのようなケースが社員負担となるのかをアナウンスしておかないと、社員にとって想定していない費用となり、費用負担についてのトラブルに発展してしまう可能性があるため、注意が必要です。
社員とのトラブルを回避するためにも、「会社都合による転居の場合は会社負担、社員都合の転居の場合は社員負担」などのルールを、社宅規定だけではなく、社員が入居する際の案内メールなどに明記するとよいでしょう。
6.さいごに
今回は短期解約違約金についてご説明しました。
転勤の頻度が高い会社にとっては、短期解約違約金は軽視できない費用です。賃貸借契約書の様式は様々ですが、短期解約違約金については特約事項に記載されていることが多いため、契約締結の際は特に注意して確認するようとよいでしょう。