借り上げ社宅を契約する際、敷金や礼金のほかに敷引(しきびき)が発生するケースがあります。
しかし、敷引が発生するエリアは限定的であるため、聞いたことはあってもはっきりと説明できる方は少ないかもしれません。
今回は、社宅担当者として知っておくべき不動産基礎知識として、敷引の定義や社宅管理上の仕訳についてご説明します。
1.敷引とは
敷引とは、物件契約時に貸主へ預け入れた金額から、一定額を退去時に差し引く特約のことを言います。
主に関西地方や九州地方で多く見受けられる商慣習です。敷引と同じ意味合いで「敷金償却」や「保証金償却」と記されていることもあります。
1-1.敷引がある場合とない場合の違い
敷引がない場合、退去時に原状回復費が0円であれば敷金全額が返還されますが、敷引がある場合は、原状回復費が0円でも敷金から敷引金が必ず差し引かれます。
また、一般的には敷引金とは別途、原状回復費が請求されます。
しかし、中には敷引金を退去時の原状回復費に充てる場合もありますので、事前に契約内容をよく確認しましょう。
1-2.退去時の返還額
敷引の有無で退去時の返還額がどう変わるのか、1か月の家賃が10万円、敷金2か月、退去時の原状回復費3万円が発生する場合を例に見てみましょう。
【 敷引1か月が発生する場合 】
入居時:貸主へ敷金20万円を預け入れる
退去時:借主へ敷金20万円から敷引10万円と原状回復費3万円を差し引いた7万円が返還される
※退去時、原状回復費が敷引に含まれない場合
【 敷引が発生しない場合 】
入居時:貸主へ敷金20万円預け入れる
退去時:借主へ敷金20万円から原状回復費3万円が差し引かれた17万円が返還される
上記の通り、入居時に預け入れた金額が同じでも、敷引があるのとないのとでは、退去時の返還額が大きく異なります。
1-3.相場
敷金や礼金の相場が家賃の約1か月分であるのに対し、敷引の相場は家賃の約2~3か月分です。
敷金や礼金の相場と比較すると高額ですが過去、最高裁判所で敷引金は高すぎなければ有効であり、家賃の2~3.5倍までは高額とは言えないという判決が出ています。
2.敷引金の仕訳
敷引金は、返還されないため費用として仕訳を行います。
ただし、敷引の金額が20万円以上となる場合は、繰延資産(※)として一定年数をかけて償却する必要があります。
※繰延資産とは、会社が支払った費用の効果が一年以上に及ぶ資産のこと
償却期間は、契約期間が5年未満の場合、契約年数で償却すると定められていますので、賃貸借契約書を確認しましょう。
詳細は、国税庁のホームページをご覧ください。
国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5460.htm
3.さいごに
今回は不動産基礎知識として、敷引についてご説明しました。
敷金、礼金、保証金、敷引…など、多様で混同しやすいですが、敷引のように退去時の返還額に大きく影響する商慣習もありますので、契約時に支払う金額と退去時に返還される金額を契約書でしっかり確認しましょう。