社宅として契約する物件を探す際、複数の仲介不動産会社から同じ物件を紹介されるケースがあります。
これは、貸主が複数の仲介会社に対して同時に入居者の募集を依頼していたり、全国の不動産会社専用のシステムを通じて物件情報が共有されていたりするためです。
今回は物件情報の流通の仕組みについてご紹介します。
目次
1.仲介会社はすべての賃貸物件を紹介できるわけではない
賃貸物件の取引を行う場合、一般的には、貸主と借主の間に仲介会社が入りますが、仲介会社は全国すべての賃貸物件を紹介できるわけではありません。
仲介会社が紹介できる物件は、貸主と仲介会社との間で結ばれる「媒介契約」の種類によって異なり、次の3種類に分けられます。
1-1.一般媒介契約
一般媒介は、貸主が複数の仲介会社に対して同時に入居者募集の依頼ができます。
また、貸主自らが借主を見つけてきた場合は、仲介会社を通す必要はありません。
複数の仲介会社から同じ物件を紹介されるのは、その物件が一般媒介契約の物件であるからです。
1-2.専任媒介契約
専任の仲介会社1社だけが対象物件を紹介できる契約形態です。
ただし、一般媒介と同様に、貸主自らが借主を見つけてきた場合は、仲介会社を通す必要はありません。
1-3.専属専任媒介契約
その名の通り、専任の仲介会社1社にすべてを任せる契約形態です。
専任媒介契約と同様に、貸主は他の仲介会社に入居者募集を依頼することはできません。
また、仮に貸主自らが借主を見つけてくることができたとしても、専任の仲介会社を通さなければなりません。
上記の通り、専任媒介もしくは専属専任媒介で契約した場合、この契約を結んだ仲介会社1社だけが物件の紹介権を得られるため、どちらも競合他社(他の仲介会社)の介入を気にする必要がありません。
その仲介会社だけが紹介できる「特別な」物件です。
2.不動産会社専用のネットワークシステム「レインズ」とは?
よくCMや広告で目にするような物件検索サイトやアプリは、ネット環境さえ整っていれば、いつでも、どこでも、誰でも、物件情報を検索・閲覧できますが、不動産業界には、不動産会社にしか見ることのできないネットワークシステム「レインズ」があることをご存じでしょうか。
2-1.レインズとは?
レインズ(REINS)とは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の頭文字から名付けられたもので、国土交通大臣から指定された、不動産流通機構(以下、指定流通機構)が運営しているコンピューターネットワークシステムです。
物件を探している方にとっては、全く耳なじみのない言葉かもしませんが、不動産業界では広く知られているシステムで、いまや不動産売買や賃貸の流通に欠かせない存在となっています。
指定流通機構の会員となっている不動産会社(宅建業者)は、このレインズを通じて物件情報を共有しています。
賃貸物件の情報登録は仲介会社の任意となるため、全ての賃貸情報が共有されているわけではありませんが、不動産取引をより適正かつ円滑に進めることができるような仕組みとなっています。
つまり、指定流通機構の会員になっている不動産会社であれば、レインズに登録された全国の物件情報を紹介することができます。
複数の仲介会社から同じ物件を紹介されるもうひとつの理由は、このネットワークシステムが機能しているからと言えるでしょう。
2-2.レインズは全国に4つ
レインズは、全国に4つあります。地域毎に分かれており、入会審査を通過した不動産会社が加入しています。
✔ 公益財団法人 東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
…北海道・青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・山梨県・長野県
✔ 公益社団法人 中部圏不動産流通機構(中部レインズ)
…富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県
✔ 公益社団法人 近畿不動産流通機構(近畿レインズ)
…滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県
✔ 公益社団法人 西日本不動産流通機構(西日本レインズ)
…鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県
3.まとめ
いかがでしたか。
今回ご紹介した、物件情報の流通の仕組みについては、これまで全く気にしてこなかったという方も多いのではないでしょうか。
「媒介契約」や「レインズ」などといった聞きなれない言葉も多く、社宅を探す社員にとってはあまり重要ではないかもしれませんが、社宅担当者としては、基礎知識のひとつとして理解しておくとよいのではないでしょうか。