借り上げ社宅は、会社が借主となり賃借した物件を社員へ貸与する制度です。
借り上げ社宅として使用している物件の契約中に、借主である会社の会社名が変更(以下、商号変更)になった場合、どのような手続きが必要でしょうか?
今回は物件契約中に商号変更した場合の対応についてご紹介します。
1.借り上げ社宅契約中の商号変更に必要な対応
借り上げ社宅における商号変更は、賃貸借契約上の借主名称の変更にあたり、貸主や管理会社に対して商号変更について通知する必要があります。
その通知の結果、貸主・管理会社によっては、名義変更に伴う契約事務手数料の請求や、契約の再締結を求められるケースもあります。
商号変更は大きく下記2つのパターンに分けることができます。
① 商号のみ変更となる場合
商号変更の通知をそのまま受理し、手続きや費用発生なく、契約名義を新商号として読み替えてくれる場合もありますが、契約事務手続きが必要となり、事務手数料が請求されるケースもあります。
② 会社分割、事業譲渡や合併等による商号変更により、従前の借主名義と異なる法人が借主となる場合
この場合、名義変更ではなく、新会社名義での再契約と見なされることが多く、仲介手数料や礼金等を新たに請求される場合もあるため、全体的に①のケースに比べ高額化する傾向があります。
上記①②については、貸主・管理会社によって、必要な手続きや請求額も異なります。
商号変更を行う際は、事務手続きと併せ費用も発生することを前提に予算計上しておくことが望ましいでしょう。
2.商号変更に関する通知は絶対にしないとダメ?
商号変更については、ホームページで開示しているので、いちいち各貸主や管理会社に対して商号変更の通知をする必要はないのでは?と思われるかもしれませんが、通常、商号変更に伴って賃料振込名義も変更となるケースが多いため、実務面からみても通知は必要となります。
また、契約書上に契約名義人変更に際する通知義務が定められているケースもあり、そのような場合は契約義務違反となる可能性もあります。
そのため、社宅契約においても他のビジネス上の取引先と同様に相手先に対してしっかりと商号変更の通知をすることが必要です。
3.いつ、誰にどんな通知を送ったらよい?
では、商号変更は、いつ・誰に・どんな通知を送ったらよいのでしょう。
ここでは、借り上げ社宅の貸主・管理会社に対する通知文に含めるべき要素とそのサンプルをご紹介します。
【 通知文内容・要素について 】
商号変更通知には、以下の要素が含まれていることが望ましいでしょう。
- 商号変更の理由
- 旧商号、新商号
- 商号変更日
- 対象物件情報、所在地情報
- (振込の場合)新賃料支払い名義 ※振込名義に変更がある場合
- 問い合わせ窓口情報
【 送付先について 】
送付時期は、極力商号変更の1か月程度前に相手に通知できるとよいでしょう。
送付先は賃貸借契約の相手先である「貸主(「貸主代理」がいる場合は「貸主代理」)」、「管理会社」へそれぞれ送付することが望ましいでしょう。
4.通知後の手続きについて
商号変更通知の発送が完了すると、貸主や管理会社から商号変更通知に対しての問い合わせや手続きに関する連絡が入ることがあります。
その連絡に応じて、名義変更に関する手続きや再契約締結、書類の提出などの対応が必要となります。
また、提出書類については商号変更の理由にもよりますが、登記簿謄本などを求められることが多いのであらかじめ用意しておくとよいでしょう。
5.まとめ
社宅の貸主や管理会社は従業員の住居を提供する大事な契約相手であるため、良好な関係を維持する必要があります。
そのため、商号変更時には、必要な要素を押さえたうえで、貸主・管理会社に対し通知を行い、物件ごとに必要な手続きを行いましょう。