借り上げ社宅の運用上、トラブルにつながりやすい場面のひとつに「入居者の退職」が挙げられます。
退職により社宅を退去する際は、転勤による退去よりもトラブルになることが多くあります。
今回は借り上げ社宅の入居者が退職する際にどのようなトラブルが発生し、トラブルを回避するためにどのような対策があるのかについてご紹介します。
目次
1.入居者が退職した際のトラブル
1-1.退去時の費用の徴収ができない
退職時に社宅を退去する場合、原状回復費用が会社負担であれば問題ありませんが、個人負担の場合は、社員から徴収しなければいけません。
この費用徴収が難しく、トラブルとなるケースがあります。
また、荷物を残したまま退去してしまい、その撤去費用についてトラブルとなるケースもあります。
1-2.解約の申し入れが漏れたり遅れたりしてしまい、無駄な家賃が発生
退去する際には、解約の申し入れが必要です。
通常、申し入れから1~2か月間(賃貸借契約の解約予告期間により変わります)は家賃が発生するため、解約予告期間より前に「解約の申し入れ」をする必要があります。
仮に、解約の申し入れが漏れたり遅れたりしてしまうと、退去して空室状態でも家賃は発生してしまいます。
契約は会社名義であるため、その家賃は会社が支払うこととなり無駄なコストとなります。
また、社宅とは別で駐車場も契約している場合、社宅は解約したけれど、駐車場の解約が漏れていることも少なくありません。
2.退職時の退去がトラブルになりやすい理由
- 退去時の費用が、退職後に確定するケースが多いため
- 退職後、社員と連絡が取れなくなるため
退去時に、社員から徴収すべき費用が確定していれば、最終給与などで調整ができる場合もありますが、原状回復費用の請求書が届くのは退去から2週間~1か月程度後になることもあり、給与などで調整ができないことが多くあります。
また、退職後に費用の説明や請求方法について相談しようとしても、連絡が繋がらないこともあり、その場合、請求書を郵送することとなりますが、支払いが無いまま時間が経過してしまい、最終的には会社が負担するケースも少なくありません。
3.トラブルを避けるための対策
退職に伴う退去トラブルをゼロにすることは難しいですが、減少させることは可能です。
トラブルを避けるための対策を2点紹介します。
3-1.退職決定後、社員に解約の手続きや費用負担について説明を行う
退職の各種手続きにおいて、社宅の解約申し入れや、退去後の費用精算方法などは 必ず事前に説明しましょう。
説明を聞き、理解していることを確認するために、誓約書を回収する企業もあります。
3-2.退職後の連絡先、請求先を確認しておく
これは通常の退職手続き時に確認される内容かと思いますが、退去の1か月程度後に原状回復費用の連絡・請求がある可能性を伝えたうえで、連絡先を確認しておきましょう。
4.さいごに
退職理由は社員により様々で、デリケートな問題が絡むことも多くあります。
今回ご紹介した対策が全てのケースで有効とまでは言えませんが、トラブルを事前に想定することで防げるケースも多くあります。
これまでトラブルが発生していない企業であっても、仮に自社で発生した場合を想定した対策の検討をおすすめします。スムーズな社宅制度運用のヒントとなれば幸いです。