借り上げ社宅の運用において、社宅担当者の負担が大きい業務の1つとして「物件に関するトラブル対応」があります。
トラブル対応が発生してしまうと大きな労力がかかるため、トラブルはできる限り避けたいと考える方も多いのではないでしょうか。
トラブルを避けるための手段は様々ですが、トラブルにつながりやすい物件の契約を避けることも有効な手段の一つです。
そこで、今回は社宅トラブルを防止するために注意すべき物件についてご紹介します。
1.トラブル防止のために注意すべき物件
賃貸物件にはマンション/アパートといった物件区分や、鉄筋造/木造といった物件構造、契約内容などの違いによって様々な種類の物件があります。
その中でも下記3つの物件は、トラブルにつながりやすいため注意が必要です。
① ペット可物件
(1)理由:初期費用や原状回復費が高額になりやすい
社員がペットを飼育している場合、ペット可物件に入居することになりますが、ペット可物件は多くの場合、敷金などの初期費用が高めに設定されています。
また、ペットによって床や壁が傷ついたり、臭いが染みついたりする可能性があるため、原状回復費も高額になりやすい傾向にあります。
(2)理由:隣人トラブルに発展しやすい
ペット可物件はペットの鳴き声や臭い、共有スペースの使い方などで隣人とのトラブルに発展しやすい傾向があります。
社員がペット飼育をしていない場合でも、近隣住人のペットが要因となってトラブルに発展するケースもあるため注意が必要です。
もし、トラブルになってしまった場合、社宅担当者が仲介役として家主・管理会社と社員の間に入って対応を行わなければなりません。
具体的には家主・管理会社への申し入れ、社員からの問い合わせ対応などを行う必要があるほか、解決に至らず転居する場合、社員の転居手配や転居コストが発生する懸念があります。
② 戸建て物件
理由:原状回復費が高額になりやすい
戸建て物件は、マンションなどの集合住宅物件に比べて修繕対象となる壁や床が多いため、原状回復費が高額になりやすい傾向にあります。
特に庭がある物件は、植栽物の管理など原状回復の基準が難しいため、原状回復費がより高額化しやすい条件といえます。
③ 定期借家物件
理由:再契約できずに転居コストが発生
定期借家物件とは、契約期間が定められている物件を指します。
定期借家物件の場合、通常の賃貸物件のように契約更新を行って継続入居することができず、継続入居にあたっては貸主と合意のうえ、再契約する必要があります。
しかし、多くの場合は、貸主意向により再契約ができないため、社員の転居手配や転居コストが発生することとなります。
2.トラブル防止のための対策
前述の通り、トラブル回避のためには、上記のようなトラブルにつながりやすい物件を避けることも重要ですが、地域によっては物件数が少ないために契約が避けられないケースも考えられます。
上記のような物件へ社員を入居させる場合には、できる限りトラブルにならないよう下記のような対策を行っておくことも重要です。
① 社員へのリスク説明
基本的なことですが、社員には必ずどのようなリスクがある物件なのかを説明してから入居させるようにしましょう。
リスクの説明にあたっては、口頭での説明だけではなく、メールや入居時に渡す案内書面などに明記することが重要です。
② トラブル発生時の費用負担
トラブルが発生した際には、費用の負担割合について社員と揉めごとになることもあります。
想定されるリスクに対して、会社として負担する項目、負担する割合などを明確に定め、リスク説明と同じように、メールや入居時に渡す案内書面などに明記するようにしましょう。
また、費用負担をより厳格に運用するには、費用負担について定めた誓約書を入居前に提出してもらうなどの対策も有効です。
3.まとめ
今回は、社宅トラブルを防止するために注意すべき物件についてご紹介しました。
トラブルに発展しやすい物件の契約を避けるためには、社宅適用外として社宅規定に定めることが最も有効です。
しかし、様々な事情で社宅規定の改定が難しい企業も多いかと思います。
規定上で制限することが難しい場合は、それぞれの物件のリスクを把握したうえでトラブルにつながらないように対策を行うようにしましょう。