外形標準課税と社宅の関係

外形標準課税という課税方式についてご存じでしょうか。

法人事業税の課税方式なので、一見、社宅制度とは関係がなさそうですが、実はそうではありません。社宅制度を運用するうえで把握しておくべきポイントがあります。

そこで、今回は外形標準課税の概要と社宅との関係についてご説明します。

1.外形標準課税とは?

外形標準課税は、対象法人の大きさ、規模を基準に課税額を決定する課税方式です。

外形標準課税で算出される税金は法人事業税であり、法人事業税とは法人が自治体(都道府県)に納める都道府県民税のことをいいます。この税金を算出する際に用いられる課税方式が外形標準課税というわけです。

ただし、全ての法人が外形標準課税の対象となるわけではありません。対象法人は、地方税法第72条の2で次のように定められています。

外形標準課税の対象法人


所得に課税される法人で事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円を超えている法人(法72条の2)。  

ただし、公共法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人は除く。

出典:東京都主税局


つまり、資本金が1億円を超えている一般法人の場合は、外形標準課税を用いて法人事業税を算出する必要があります。

外形標準課税が導入される前は、法人事業税は所得に応じて税額を算定していました。
しかし、企業は活動を行うにあたって、所得に関係なく地方自治体から行政サービスの提供を受けています。

よって、公平性を保つため、必要経費は分担する必要があるとの考えから、所得のほかに対象法人の事業所の床面積や従業員数、資本金等の外形的に表す基準を課税基準として税額を決定するため外形標準課税が導入されました。

外形標準課税の対象区分

外形標準課税の対象法人であっても、法人事業税をすべて外形標準課税で算出するわけではありません。

法人事業税は「所得割」「付加価値割」「資本割」の3つで構成されています。

このうち「所得割」は企業の所得に応じて課税されるため、外形標準課税の対象ではありませんが、「付加価値割」「資本割」は外形標準課税を用いて算出する必要があります。

【法人事業税の構成】


・事業税に関する用語の意義

所得割    :所得により法人の行う事業に対して課する事業税をいう
付加価値割  :付加価値額により法人の行う事業に対して課する事業税をいう
資本割    :資本金等の額により法人の行う事業に対して課する事業税をいう
※出典:e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp
 地方税法 第72条(事業税に関する用語の意義)より

 

2.社宅制度に関係するポイント

では、社宅制度は外形標準課税とどのように関係するのでしょうか。

前述した法人事業税の「付加価値割」が関係します。
付加価値割を更に細分化すると下図のようになり、この区分のうち「純支払賃借料」の算出に社宅制度が関係することになります。

【付加価値割の構成】

・純支払賃借料とは?
支払賃借料から受取賃借料を差し引いた金額のことをいいます。

支払賃借料、受取賃借料とは法人が賃借権等の対価として支払うまたは受け取る金額のことです。

【純支払賃借料の構成】

 

支払賃借料、受取賃借料に関しては東京都主税局で次のように明記されています。

出典:東京都主税局

社宅制度に当てはめた場合

この純支払賃借料を社宅制度に当てはめると下図のようになります。

以上のように、法人が家主へ支払った賃料等は支払賃借料、法人が従業員から受け取った賃料は受取賃借料に算入しなければいけません。
そのため、社宅運用においては、それぞれの物件に対して支払った金額、受け取った金額を管理することが必要です。

また、賃貸借期間が1か月未満の物件は純支払賃借料の対象外となるため注意しましょう。

 

3.まとめ

外形標準課税は法人事業税の課税方式ですが、社宅制度にも関連するため、企業が社宅を運用するうえでは必ず把握しておかなければならない方式です。

万が一、申告・納税を行わなかった場合、延滞金などのペナルティが発生する場合がありますので、課税方式について正しく理解し、社宅制度を適切に管理できるようにしておきましょう。

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