社宅担当者が賃貸借契約に関する知識とあわせて知っておかなければならないのが「火災保険」です。
賃貸借契約の際にあわせて契約することが多い火災保険ですが、火災の際に補償してくれる保険というイメージはあっても、具体的な内容については分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は社宅担当者向けに「(賃貸物件)入居者用の火災保険」についてご紹介します。
1.火災保険とは
火災保険とは、火災などの自然災害や事故によって生じた損害を補償する保険です。
「火災」と名前がついていますが、賃貸借契約時に貸主や不動産仲介会社が勧めてくる保険は、実際は住まいに関する総合的な保険として火災をはじめとした自然災害、日常生活のトラブルで生じた損害なども補償してくれる保険です。
補償範囲は保険商品によって異なりますが、一般的な入居者用の火災保険は火災、落雷、ガス爆発、風災、ひょう災、雪災、水災、盗難、破汚損、第三者への損害などが対象となります。
2.入居者用の火災保険の内訳
入居者用の火災保険は、主に「家財保険・借家人賠償責任保険・個人賠償責任保険」で構成されており、それぞれ補償する内容が異なります。
家財保険
入居者自身が所有する家財の損失を補償する保険です。
具体的には自室や隣の部屋からの出火で燃えた家財や、台風によって浸水し壊れた家電などが該当します。
また、ここでいう家財とは、いわゆる生活関連の動産全般のことをいい、テレビやパソコン、冷蔵庫・洗濯機といった家電だけではなく、テーブルやタンス、洋服、現金なども対象に含まれます。
借家人賠償責任保険
偶発的な火災、事故などで建物に損害を与えてしまった場合の原状回復費用を補償する保険です。
そもそも火災で発生した損害については、失火責任法によって、重大な過失がない限り借主が損害を負担することはありません。
しかし、賃貸住宅では退去時に借主が原状回復する義務があるため、火災で部屋が損壊した場合でも借主負担で原状回復を行う必要があります。
火災、事故などで部屋が損壊した場合は原状回復費用も高額となってしまうため、その費用を補償するために設定されている保険になります。
また、偶発的な事故によって損害を受けた場合の補償であるため、部屋を故意に傷つけた場合などには適用されません。
個人賠償責任保険
他人にケガをさせてしまった場合の治療費や、他人の物を壊してしまった場合の損害賠償金を補償してくれる保険です。
具体的には、洗濯機のホースが外れて漏水し階下の住人の家財を壊してしまった場合や、2階から物を落とした際に、通行人にケガをさせてしまった場合などに適用されます。
逆に、故意にケガをさせた場合や借りていたものを壊した場合などには適用されません。
保険は主に上記3つで構成されていますが、多くの場合、基本となる「家財保険」の特約として「借家人賠償責任保険・個人賠償責任保険」が設定されています。
3.貸主指定の保険でなくてもよい
賃貸借契約の際に貸主指定の保険加入を求められることも多いかと思いますが、貸主指定以外の保険を自社で探して契約できる物件も多くあります。
不動産仲介会社に確認してみるとよいでしょう。
4.付保漏れを防ぐことが重要
保険を企業契約とするか社員契約とするかは各企業によって異なりますが、どちらであっても付保漏れがないように管理を行うことが重要です。
借り上げ社宅の場合、賃貸借契約の借主名義は企業であるため、原状回復費用の請求先は社員ではなく企業です。
そのため、保険の契約者が社員であっても、社員が更新手続きを忘れてしまった状態で火災や水漏れなどが起こった場合は、企業が高額な原状回復費用の請求を受けることになります。
企業にとって、保険が企業、社員どちらの契約であっても付保漏れが大きなリスクとなるため、企業側で付保管理を行うことが重要です。
また、付保漏れを防ぐための1つの手段として、包括保険を利用するという手段もあります。
包括保険とは?
包括保険とは、物件ごとに個別契約ではなく、複数の物件の保険をまとめて契約する保険のことをいいます。
物件ごとに保険に加入する場合は、個別に契約・更新・解約手続きを行う必要があります。
しかし、包括保険の場合、入居・退去の際に保険会社へ物件を通知すれば自動的に保険対象として追加、または保険対象から除外してくれるため、手間を大幅に削減できるうえ、付保漏れを防ぐことが可能です。
保険会社や社宅代行会社から包括保険について提案を受けることも可能であるため、付保管理が手間に感じている場合は相談してみるのもよいでしょう。
5.さいごに
保険商品によって補償内容や料金はさまざまです。自社にとって最適な補償内容、料金の保険を選ぶようにしましょう。
また、付保漏れがあると企業にとって大きなリスクとなるため、付保漏れがないように管理することが重要です。
付保漏れの対策として、包括保険の活用なども検討してみるとよいでしょう。