今回は、㈱労務研究所が実施されたアンケート調査の結果をご紹介します。
㈱労務研究所が2021年1月に発刊した「旬刊 福利厚生 2311号」に掲載されている「社宅・独身寮および借上社宅に関する付帯調査」で実施されたアンケート結果になります。
それでは、調査結果の内容をご紹介します。
目次
1.アンケート内容について
アンケートは、下記7点の業務について、「現在アウトソーサーへ依頼している業務は?」という質問を企業に行う内容となっています。
設定されている7点の業務は、アウトソーシングした場合、どこのアウトソーサーであっても対応するというような標準的な業務ではありません。
対応するアウトソーサーと対応しないアウトソーサーに分かれるような業務や、アウトソーサーが対応する場合でも別途費用が必要となるようなオプション業務が設定されていて、その中でアウトソーサーへ依頼している業務を質問するアンケートになっています。
① 使用料計算データの作成
② 入居期限の管理
③ 使用料等の入居者への通知
④ 入居者との原状回復負担額の調整
⑤ 基準家賃設定のサポート
⑥ 社宅制度見直しのサポート
⑦ 利用者の引越手配
2.「 アウトソーサーに依頼している業務 」調査結果
アウトソーサーに依頼している業務についての結果は以下の通りとなっていいます。
1位 入居者との原状回復負担額の調整 …37%
2位 社宅利用者の引越手配 …31%
3位 使用料計算データの作成 …29%
4位 入居期限の管理 …18%
5位 基準家賃設定のサポート …14%
6位 使用料等の入居者への通知 …10%
7位 社宅制度見直しのサポート … 8%
ここからは、アウトソーサーへ依頼している業務として回答が多かった上位3つの業務について解説したいと思います。
3.「入居者との原状回復負担額の調整」 業務について
最も多かったのが「入居者との原状回復負担額の調整」業務です。
社宅運用において発生する業務の中でも負担の大きい業務であり、委託ニーズの高い業務です。
賃貸物件を解約する際は、原状回復費が必要となります。
原状回復費とは、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義されています(出典:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン[国土交通省])。
入居者の故意・過失などによる損耗については、賃借人が賃貸人に対して原状回復費を負担しなければなりません。
借り上げ社宅制度を運用し、社宅として利用していた物件を解約する場合には、原状回復費を確定するために、2つの調整が必要となります。
1つ目は、必要な原状回復費に対する貸主と借主の負担割合調整
2つ目は、借主負担額に対する企業と入居社員の負担割合調整です。
社宅管理をアウトソーシングすると、1つ目の調整である、貸主と借主の負担割合に関する協議は企業に代わりアウトソーサーが対応してくれます。
しかし、2つ目の調整である、「借主負担額に対する企業と入居社員との原状回復負担額の調整」業務は、対応するアウトソーサーと、対応しないアウトソーサーに分かれます。
この業務をアウトソーサーが対応してくれるかどうかによって社宅担当者の工数負担は大きく変わりますので、これから社宅管理のアウトソーシングを検討する場合は、必ず代行会社に対応可否を確認すべき業務です。
また、現在アウトソーシングをしているものの、この業務については自社で対応しているという企業は、改めて委託中のアウトソーサーへ相談してみてはいかがでしょうか?
4.「社宅利用者の引越手配」 業務について
アウトソーサーに依頼している業務として、次に多かったのが「社宅利用者の引越手配」業務です。
転勤者を社宅適用者とする社宅制度の場合は、ほとんどのケースで社宅の手続きと併せ引っ越し手配が必要になります。
そのため、特定の引っ越し会社を使用しなければならないなどの特殊事情がない限り、アウトソーサーに依頼する企業が多くなっています。
アウトソーサーのサービス範囲も徐々に拡大を続けており、ほとんどのアウトソーサーが対応可能な業務です。
ただし、アウトソーサーが提供する引っ越し手配サービスの運用スキームは同一ではありません。
複数の引っ越し会社から見積もりをとったうえで、依頼先を決定する相見積もりスキームもあれば、依頼する引っ越し会社を1社に固定するスキームもあります。
引っ越しの依頼件数や、引っ越しが集中する異動月の有無など、引っ越しの発生傾向も企業によって異なります。
社宅の運用と併せ引っ越し手配の業務についてもアウトソーサーに依頼する企業が増えていますが、アウトソーサーが提供する引っ越し運用スキームが自社の引っ越しの発生傾向に合わない場合もあります。
例えば、3月に異動が集中している企業の場合、相見積もりによる運用スキームでは、引き受けてもらえる引っ越し会社を探すだけでも苦労することになるうえ、相見積もりによるコスト削減効果も期待できません。
このようなミスマッチを回避するためにも、これから社宅管理のアウトソーシングを検討し、併せて引っ越し手配業務の依頼を検討する場合は、アウトソーサーの引っ越し運用スキームを確認し、自社の引っ越し発生傾向との相性を含め依頼可否を検討しましょう。
5.「使用料計算データの作成」業務について
アウトソーサーに依頼している業務として3番目に多かったのは「使用料計算データの作成」業務です。
使用料計算データとは、入居社員から徴収する社宅の使用料データのことです。
多くの企業では給与から控除する形で使用料を徴収していますので、決められた期日までに給与と連携する必要があります。毎月、新規契約も解約も発生せず、1か月分の家賃に対して社宅規定で定められた算出式通りに使用料を計算するだけであればそれほど大変な業務ではないはずです。
しかし、実際の運用においては、1か月の間に、新規契約や解約が何件も発生します。
そうした契約の動きに合わせて各社員の契約開始日や解約日、実際の入退去日などを把握しながら、使用料計算データを作成しなければなりません。
給与に連携するため、ミスが許されない業務でもあり、負担の大きい業務です。
社宅件数や入退去者数が多ければ多いほど負荷は高い業務となるため、管理件数が多い企業ほどアウトソーサーへ依頼している割合が高い業務です。
使用料計算の算出式や算出のための考え方は企業ごとに全く異なるためアウトソーサーにとっても簡単に対応できる業務ではありません。
そのため、アウトソーサーへ依頼しているが、運用はあまりうまくいっていないというケースも少なくありません。
アウトソーサーへ依頼しているのに使用料計算データの作成がうまくいかないのは、依頼している企業の使用料計算データ作成の複雑さにアウトソーサーが対応しきれていない可能性もあります。
アウトソーサーへの使用料計算データ作成業務の依頼を検討する場合には、アウトソーサーのデータ作成の方法や運用体制などを詳細に確認しながら慎重に検討を行うようにしましょう。
6.まとめ
今回は㈱労務研究所が実施された、「アウトソーサーへ依頼している業務」のアンケート調査結果についてご紹介しました。
アウトソーサーへの依頼業務を見直す際や、これからアウトソーシングの利用を検討する際に参考にしていただければ幸いです。
また、今回ご紹介したアンケート調査を実施された労務研究所が発刊する「旬刊 福利厚生」では、福利厚生に関する企業の取り組みの紹介や、様々なアンケート調査などを実施されています。
福利厚生に関する取り組みを検討する際の参考情報などが多く掲載されていますのでご興味があればこちらをご覧ください。